確定申告という言葉を聞くと、「難しそう」「何から始めたらいいのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか?
私も法人設立後、初めての確定申告で不安だらけでした。
しかし、基本の流れや準備物をしっかり押さえれば、スムーズに申告を進めることができます。
この記事では、私自身の体験をもとに、法人の確定申告の具体的な手順をわかりやすく解説します。
法人確定申告とは?
法人確定申告とは、法人(会社)が1年間の経済活動をまとめ、所得(利益)を計算して税務署に報告し、法人税や地方税を納める手続きのことを指します。
会社の規模や種類に関わらず、基本的にすべての法人が確定申告を行う義務があります。
これには、赤字の会社や活動を行っていない休眠会社も含まれます。
確定申告が必要な理由
①法律上の義務
法人税法などの法律に基づき、法人は所得計算と納税を行う義務があります。
税務署に確定申告書を提出することで、法人が納税に関する責任を果たします。
②ペナルティ
確定申告を怠ると以下のようなペナルティがあります。
• 無申告加算税:期限内に申告しなかった場合に課される追加税(最大20%)。
• 延滞税:期限までに納税が行われなかった場合に発生する利息的な税。
• 青色申告の取り消し:青色申告のメリット(赤字繰越や特別控除など)が失われる。
• 刑事罰:悪質な場合、重加算税(35-40%)や罰金、場合によっては懲役刑が科される。
確定申告が必要となる法人
確定申告が必要な法人には以下のような種類があります。
株式会社
日本で最も一般的な法人形態。営利目的で設立され、株式を発行して資金調達を行う。
合同会社
近年人気が高まっている法人形態。柔軟な経営と低コストで設立できることが特徴。
一般社団法人・一般財団法人
非営利法人であっても収益事業を行う場合、法人税の申告が必要。
NPO法人
主に公益目的の活動を行う法人。ただし、収益事業を行う場合は申告が必要。
その他
宗教法人、学校法人なども収益事業を行う場合は確定申告が必要。
法人の確定申告の提出期限とスケジュール感
提出期限
法人税の申告期限は決算期末日から2か月以内です。この期限までに申告書を提出し、税金を納付する必要があります。
例:3月末決算の場合
• 決算期末日:3月31日
• 申告期限:5月31日
• 納付期限:5月31日
スケジュール感
①:決算準備(決算期末日まで)
経理データの整理や決算書の作成を進める。必要に応じて税理士に相談。
②:決算確定後(1か月目)
法人税、住民税、事業税の計算を行い、申告書を作成する。
③:提出・納付(2か月目)
期限内に申告書を提出し、税金を納付する。
確定申告をする上でのポイントと注意事項
期限延長
決算期末日から2か月以内が基本ですが、特定の手続きを行うことで1か月延長(計3か月以内)できる場合があります(主に会計監査を受ける法人が対象)。
赤字法人も申告義務あり
たとえ利益が出ていなくても、法人税の申告は必要です。
電子申告の活用
e-Taxを利用すれば、簡単に申告が可能。これにより青色申告特別控除の要件を満たせる場合もあります。
確定申告の準備:これが揃えば安心!
確定申告は、個人事業主や法人経営者にとって重要な年中行事です。
以下に、必要な書類や手順について解説していきます。
確定申告で必要な書類とデータ一覧
確定申告の際に必要な資料は以下の通りです。
決算書
法人の場合、貸借対照表や損益計算書などが必要。
仕訳帳・総勘定元帳
日々の取引を記録した帳簿類。
領収書や請求書
経費や収入の裏付けとなる証拠資料。
預金通帳の写し
ビジネス用口座の入出金明細。
契約書・納品書
特定の収益や費用に関する詳細確認のため。
給与明細や源泉徴収票
従業員がいる場合や、副業収入がある場合。
固定資産台帳
減価償却資産の管理のため。
税務署からの通知書
前年度の繰越欠損金や修正申告に関する通知など。
会計ソフトの活用と利便性
会計ソフトを使うと、記帳作業や帳簿作成が効率的に行えます。特にクラウド型の会計ソフトは、どこからでもアクセスできるため便利です。
仕訳の自動化
銀行口座やクレジットカードと連携し、自動で仕訳を作成。
レポート機能
グラフや損益計算書、キャッシュフロー表などを自動生成。
税務申告書の作成
確定申告書類を簡単に出力できる機能を備えているものも多い。
データの一元管理
領収書の画像取り込みや、取引データの集約が可能。
実際にフリー会計を使ってみた体験談
私が使用した「フリー会計」の特徴と感想を以下にまとめました。
メリット
• 使いやすさ:初心者でも直感的に使える設計。スマホアプリもあり、外出先でも作業可能。
• 時間削減:領収書の撮影から仕訳が自動化されるため、手入力の手間が削減。データがクラウドに保存されるためバックアップ不要。
デメリット
•法人会計の複雑な処理(減価償却の細かい設定など)はやや不便に感じる場面も。
会計ソフトの便利な機能
• グラフ表示:月ごとの収支や費用内訳が視覚的に分かりやすい。
• 帳票出力:損益計算書や貸借対照表などをワンクリックでPDF出力。
• 税務申告書の作成サポート:会計データから直接、青色申告決算書や申告書類を生成。
税理士への依頼のタイミング
税理士に依頼する必要性やタイミングについては以下の通りです。
依頼が必要な場合
• 確定申告が複雑で、正確性を重視したい場合。
• 節税対策や税務調査対策を行いたい場合。
タイミング
• 決算期の数か月前から相談するとスムーズ。
• 締切ギリギリだと税理士側の対応が難しくなるため、1月中旬頃までに相談開始が望ましい。
実際の確定申告の手順
法人として確定申告を行う場合、以下のステップで進めます。
初めての申告時は不安もありますが、順を追って準備すればスムーズに進められますよ。
ステップ1:決算書を作成する
決算書には主に損益計算書と貸借対照表が必要です。これらは事業の収益や財務状況を示すもので、法人税申告書の作成に欠かせません。
損益計算書のポイント
売上高:事業収益の合計。
経費:販売費、一般管理費、原価など。→ 領収書や仕訳帳をもとに正確に計上。
営業利益:売上高から経費を差し引いた金額。
経常利益:営業利益に金融収益や損益(利息、配当など)を加えたもの。
当期純利益:最終的な利益。法人税額の基礎となる。
貸借対照表のポイント
資産:現金、預金、売掛金、在庫、固定資産など。→ 資産を正確に評価。
負債:借入金や買掛金などの未払い分。
純資産:資本金や利益剰余金(過去の利益の蓄積)。
決算書作成時、前期からの繰越項目や棚卸し資産の調整を忘れないように。
ステップ2:法人税申告書を作成
決算書をもとに、法人税申告書を作成します。主要な税目について解説します。
法人税
• 法人税額は「課税所得」に税率を掛けて計算します。
課税所得 = 当期純利益 ± 税務調整項目(損金不算入や益金不算入など)
税率の例(中小法人の場合)
• 年800万円以下の課税所得:15%
• 年800万円超の課税所得:23.2%
地方法人税
• 地方法人税は法人税額に対して一定割合を掛けて計算。
(例:法人税額の10.3%)
消費税
• 売上消費税額 − 仕入消費税額 = 納付すべき消費税額
具体例:初めて計算したとき
• 利益:500万円
• 課税所得:500万円(調整後)
• 法人税額:500万円 × 15% = 75万円
• 地方法人税額:75万円 × 10.3% = 7.725万円
• 消費税額(仮定)
売上消費税額 100万円 − 仕入消費税額 40万円 = 60万円
→ 総税額 = 75万円 + 7.725万円 + 60万円 = 142.725万円
ステップ3:電子申告または郵送で提出
確定申告書類が完成したら、提出方法を選びます。
e-Taxを使った申告の手順
1. 事前準備
• e-Tax用の電子証明書(マイナンバーカード等)を取得。
• e-Taxソフトや会計ソフトの連携設定を完了。
2. e-Tax画面での入力
• 申告書類をPDF形式またはXML形式でアップロード。
• 添付資料(決算書、付表など)もアップロード。
3. 電子署名の付与
• 電子証明書を利用して申告書に署名を行う。
4. 送信
• 入力内容を確認し、税務署へ電子的に送信。
5. 受領通知
• 送信後、税務署から受領通知が送られる。
郵送での提出
• 申告書を印刷し、必要書類を添付。
• 管轄の税務署へ提出(持参または郵送)。
電子申告の場合、控除(e-Tax特別控除)を受けられる場合があります。
私の体験談:初めての確定申告で得た教訓
初めての確定申告では多くの学びがありました。その中で特に役立った教訓やポイントを、以下の観点から解説します。
ミスを防ぐために気をつけたポイント
確定申告では小さなミスが後々のトラブルにつながるため、以下を徹底しました。
領収書の保管方法
• 専用フォルダーを準備:月別・用途別に分類。
• デジタル化の活用:領収書はスマホアプリで撮影し、クラウド保存。これにより紛失のリスクをゼロに。
仕訳の統一ルールを作成
• 勘定科目の使い方を統一(例:「交通費」や「通信費」など)。
• 経費を分類する際に迷った場合のメモを残し、次回以降に活用。
• 税理士や参考書で標準的な仕訳方法を確認しておく。
ダブルチェックを習慣化
• 年度末に仕訳帳や総勘定元帳を見直し、領収書との突合を実施。
• 金額の整合性が取れていない箇所を発見することができ、事前に修正可能。
時間を効率化するためのコツ
確定申告準備は時間がかかる作業ですが、効率化するために以下を実践しました。
会計ソフトのフル活用
• 自動仕訳機能を活用:銀行口座やクレジットカードと連携して、日々の仕訳を自動化。
• テンプレート機能を利用:毎月発生する定期的な取引(家賃、リース代など)をあらかじめ登録。
期限を意識したスケジュール管理
• 確定申告の締切を逆算し、1月末までに90%を完成させる目標を設定。
• 月初に前月分の記帳を確実に終わらせるルーチンを作る。
毎月の記帳の重要性
一度にまとめて記帳しようとすると、以下の問題が発生しました。
• 作業量の負担増:数カ月分の仕訳を一気に行うとミスが多発。
• 記憶の曖昧さ:支出の目的や背景を忘れ、適切な仕訳が困難。
毎月の記帳を徹底した結果
• 作業が分散され、確定申告直前でも余裕を持てた。
• 経費や利益状況を常に把握でき、資金繰りや節税策の検討が容易に。
• 税務署からの質問にもスムーズに対応できる自信がついた。
経費管理アプリの活用
経費管理アプリを使うことで効率が飛躍的に向上しました。以下は具体例です。
導入したアプリと使い方
• Money Forwardやfreee:領収書を撮影するだけで経費登録が完了。
• クラウド連携:会計ソフトと同期し、記帳データとして利用可能。
メリット:自動で勘定科目を推定してくれるため、手動入力の手間が大幅に削減。
活用したポイント
• 定期支出の自動化:サブスクリプションサービスやクレジットカードの明細が自動的に記録。
• タグ機能を活用して、個別プロジェクトの経費を分けて管理。
• ダッシュボード機能でリアルタイムに収支を確認。
確定申告後にやるべきこと
確定申告が終わったら、それで終わりではありません。納税手続きや次年度に向けた準備、日々の経理作業の見直しなどが重要です。
以下に沿って、詳しく解説します。
納税手続きの方法
確定申告後に税額が確定したら、期限内に納税を行います。主な方法は以下の通りです。
銀行振込
銀行振込の手順
1. 税務署から送付された納付書(または税務署で入手)を使用。
2. 銀行窓口で納税金額を振込。
3. 振込後、受領書を保管。
振込手数料がかかる場合あり。
口座振替
口座振替の手順
1. 税務署に「預貯金口座振替依頼書」を提出(事前登録が必要)。
2. 申告期限後の指定日に口座から自動引落し。
• メリット:手続きが一度で済み、振込の手間が省ける。
残高不足に注意。
クレジットカード払い
クレジットカード手順
1. 税務署の公式サイトから納税用ページにアクセス。
2. クレジットカード情報を入力して納付。
• メリット:ポイントが貯まる場合あり。
手数料が発生する。
インターネットバンキング(e-Tax)
インターネットバンキング(e-Tax)手順
1. e-Taxで申告時に「電子納税」を選択。
2. インターネットバンキングのサイトから税額を納付。
• メリット:全てオンラインで完結。
利用する金融機関が対応しているか事前に確認。
次年度に向けた準備
確定申告直後は、次年度に向けて動き出すチャンスです。
過去の申告内容を振り返る
• ミスや改善点を確認。(例:領収書の紛失、仕訳の不備、経費計上の漏れなど)
• 税理士や会計ソフトのサポート内容も見直す。
節税対策の検討
• 青色申告の承認申請(未登録の場合)。
• 経費計上のルール見直しや、減価償却資産の追加購入計画。
• 節税効果の高い制度(iDeCo、小規模企業共済など)の活用。
定期的な経理作業を習慣化する
申告の効率を高めるためには、日々の経理作業を習慣化することが重要です。
毎月のルーチン作業
•仕訳入力:月末までに取引内容を記録。
•領収書整理:日付ごとに分類し、デジタル化も実施。
•月次決算:収支やキャッシュフローを月単位でチェック。
四半期ごとのチェック
•売上や経費の傾向を確認し、次の施策を立案。
•税理士に相談する場合は、四半期ごとのレビューを依頼。
効率化ツールの活用
•経費管理アプリ:日々の支出を簡単に記録。
•自動連携機能:銀行口座やクレジットカードを会計ソフトと接続。
会計ソフトのバージョンアップ確認
使用している会計ソフトの最新機能や制度対応を定期的にチェックすることも大切です。
最新バージョンの確認
• 税法改正に対応するため、ソフトのアップデート情報を確認。
(例:消費税の税率変更、電子帳簿保存法の改正対応など)
新機能の活用
• 自動仕訳の精度向上:AI機能が向上している場合が多い。
• 分析機能:収益やコストを可視化する新しいレポート機能を試す。
サポートプランの見直し
• ソフトの有料サポートやプランの更新時期を確認。
• 必要に応じてプランを変更し、コストパフォーマンスを最適化。
よくある質問とQ&A
A1.以下のようなことに気をつけましょう。
法人確定申告でつまずきやすいポイント
帳簿の作成・整理不足: 経費や売上の記録漏れ、不適切な仕訳。
税法の理解不足: 減価償却、損金算入のルール、税額控除の適用などが難解。
申告書の作成: 特に別表(別表四・五など)の記載ミスが多い。
提出期限と納税の管理: 遅延によるペナルティのリスク。
A2.以下のようなケースに当てはめて、考えましょう!
税理士に依頼すべきケース
• 初めての確定申告で手続きやルールがわからない。
• 事業規模が大きく、取引が複雑。
• 節税対策をしっかり行いたい。
自力でできるケース
• 取引が少なく、シンプルな収支構造。
• 簿記や税法の基本知識があり、専用ソフトを使いこなせる。
• 時間に余裕がある。
依頼コストと時間を比較して、自身の状況に合った選択をすると良いです!
まとめ
法人の確定申告は最初こそ大変ですが、準備と手順をしっかり踏めば難しくありません。
私自身のの経験を活かしながら、ぜひ今年の確定申告をスムーズに乗り越えましょう!